東レが水処理膜の性能を大幅に向上させ、塩透過率を従来比で55%低減する技術を開発しました。この進歩により、これまで必須だった後処理工程や設備の一部を省略できるようになり、水処理プラント全体の設計思想に変革をもたらす可能性があります。膜素材の改良によって実現したこの技術は、単なる性能向上にとどまらず、水インフラの経済性を根本から見直す契機となります。

参考: 東レ、水処理膜の塩透過率55%低減 工程や設備の省略も可能に(日本経済新聞)

分析・見解

塩透過率55%減で一段処理も視野に

塩分をどれだけ通してしまうかを示す「塩透過率」を55%減らせるというのは、海水から真水を作る逆浸透膜(=海水中の水だけを通す膜)の技術として、非常に大きな進歩です。現在の海水淡水化プラントでは、一段目の膜処理だけでは飲料水の基準を満たせないため、二段目の処理や追加の脱塩工程を組み込むのが一般的です。東レの新技術は、この前提を覆します。

コスト面での複合的な削減効果

塩透過率が半減すれば、一段処理だけで目標の水質に届くケースが増え、プラント全体の設置面積を小さくできます。これは設備費の削減にとどまりません。運転にかかるエネルギーの削減、メンテナンス頻度の低下、薬品使用量の減少という、複合的なコスト削減につながります。試算では、総運用コストを20〜30%削減できるプロジェクトも出てくるでしょう。

既存プラントの改修にも使える即効性

注目すべきは、この技術が既存プラントの改修にも使える点です。膜のモジュール(部品ユニット)を交換するだけで性能を高められるため、新規建設を待たずに水処理能力を引き上げられます。水不足が深刻化する中東や北アフリカ地域では、既存プラントの能力を高めることが急務であり、この膜技術は即効性のある解決策になります。

東レの技術蓄積が競合との差別化を後押し

東レは炭素繊維で培った高分子材料の技術を膜開発に応用してきましたが、今回の成果はその蓄積が実った形です。競合するダウやハイドロノーティクスとの違いが一層明確になり、高付加価値市場でのシェア拡大が見込まれます。

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ビジネスへの影響

一段処理化で設備投資の判断基準が変わる

プラント設計者と運用者にとって、この技術は設備投資の判断基準を変えます。従来は二段処理が必須だった案件で一段処理への簡素化が可能になれば、初期費用で15〜25%、運転費用で年間数千万円規模の削減が実現できます。

用地が限られる案件ほど恩恵が大きい

特に影響が大きいのは、用地に制約のあるプロジェクトです。都市近郊や島嶼部での海水淡水化では、設備をどれだけコンパクトにできるかが事業として成り立つかどうかを左右します。工程を減らして省スペース化できれば、これまで採算が取れなかった立地でもプロジェクトが成立します。

既存設備の膜交換だけで処理能力を向上

また、既存プラントの膜交換の時期に合わせて新技術を導入すれば、追加投資なしで処理能力を高められます。水需要が増加している地域では、新規プラント建設よりも既存設備の能力増強が現実的な選択肢となり、この膜技術がその鍵を握ります。

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