ニュースの概要

三機工業、日本下水道事業団、横浜市の共同研究体が、国土交通省の上下水道一体革新的技術実証事業で、MABR併用型活性汚泥法の実証に乗り出しました。実証は横浜市の下水処理施設で2026年6月2日から2027年3月31日まで行われます。MABRは、気体を通す膜を介して微生物の近くへ酸素を供給する技術です。従来方式の曝気に伴う電力消費を抑えながら、既存の活性汚泥設備と組み合わせて処理能力を維持、向上できるかが焦点になります。単なる新設備の導入ではなく、老朽化施設を活用した脱炭素化の現実解になり得る点で、自治体と事業者の双方に意味を持つ取り組みです。

引用元: 横浜市でMABR併用型活性汚泥法の実証を開始、脱炭素化に向けた上下水道一体の革新的技術として採択(Excite News / PR TIMES)

分析・見解

電力を食う曝気工程にMABRを組み込む狙い

今回の実証で重要なのは、MABRを新しい単独処理方式として競わせるのではなく、既存の活性汚泥法に部分的に組み込む点です。下水処理場では、反応槽へ大量の空気を送り込む曝気工程が電力消費の大きな割合を占めます。一般的な施設では、処理場全体の電力のうち曝気関連が半分前後に達する例もあり、ここを効率化できれば、再生可能電力を買い増すだけでは得にくい恒常的な削減効果が生まれます。

膜による酸素供給の仕組みと実施設特有の課題

MABRの特徴は、膜の内側に酸素を供給し、膜表面に形成された微生物の層へ効率よく届けることです。水槽全体を強く撹拌して酸素を拡散させる従来の曝気に比べ、酸素移動の無駄を抑えられる可能性があります。また、硝化を担う微生物と脱窒に関わる微生物が近くにいる環境をつくりやすく、窒素除去の安定化にもつながる余地があります。ただし、膜の目詰まり、微生物層の厚さの制御、清掃頻度、流入水質の変動への対応は、実験室では見えにくい実施設ならではの課題です。

電力削減率だけでは測れない複数の評価指標

評価すべき指標は、単純な電力量の削減率だけではありません。処理水の生物化学的酸素要求量、浮遊物質、アンモニア性窒素、全窒素を季節ごとに確認し、水1立方メートルあたりの消費電力量と、除去した窒素量あたりの電力を併記する必要があります。さらに、膜交換や洗浄、予備機器、停止時の切り替えまで含めた生涯コストで比較しなければ、導入後に想定外の維持管理費が膨らむ恐れがあります。

省スペース化と地域全体のエネルギー設計への広がり

独自の視点として、MABRの価値は電力削減だけでなく、処理場の増設余地を生み出す点にもあります。人口密度の高い都市部では、新たな水槽用地の確保が難しく、既存施設の処理能力を高めること自体が重要な投資効果です。省エネルギーと省スペースを同時に実現できれば、更新時期を迎えた施設の再編計画にも組み込みやすくなります。一方、処理水量が少ない時間帯や雨天時には運転条件が大きく変わるため、定格性能ではなく、年間を通じた負荷への追従力が実用化の分かれ目になります。

上下水道一体の事業として見ると、下水処理場は電力を消費する施設であると同時に、消化ガス、汚泥、処理水という資源を持つ拠点でもあります。MABRによる電力需要の抑制を、太陽光発電、汚泥処理、再生水利用、遠隔監視と組み合わせれば、個々の機器の省エネを地域全体のエネルギー設計へ広げられます。今回の実証では、技術として成り立つかに加え、自治体が発注仕様書へ落とし込める性能保証の方法、職員が扱える保守手順、既存設備との責任の分け方まで示せるかが、横浜市外への普及を左右するでしょう。

ビジネスへの影響

既存施設への改修余地をどう棚卸しするか

下水処理事業者にとって、今回の実証は新設案件だけを狙う話ではありません。まず検討すべきは、既存施設のどの反応槽にMABRを組み込めるかという改修余地です。水槽の寸法、膜ユニットを搬入する経路、送風機と配管の余力、処理水質の規制条件を棚卸しすれば、全面更新と部分改修の費用差を比較できます。特に、設備更新が近い施設では、従来型の曝気機をそのまま交換する案と、MABRを一部導入する案を同じ耐用年数で評価することが重要です。

電力削減効果は多角的な指標で評価すべき

意思決定では、削減できる電力を単価だけで換算しないことも大切です。電力価格の上昇リスク、二酸化炭素排出量の削減価値、契約電力の低減、将来の排出規制への対応力をまとめて評価すべきです。逆に、膜の交換費、洗浄薬品、専門保守、予備系統の確保を見落とすと、見かけの省エネ率が高くても投資の回収が遅れます。実証期間中は、処理性能だけでなく、保守にかかる時間、故障時の復旧時間、職員教育に必要な工数を確認する必要があります。

機器販売から運転成果の提案への転換が問われる企業

機械、膜、計装、制御、保守を担う企業には、単体機器の販売から運転成果を含む提案への転換が求められます。流入水量や水質を予測する制御、電力と水質を同時に監視する画面、遠隔支援の仕組みを一体化できれば、価格競争を避けやすくなります。自治体側は、導入前後の測定方法と性能保証の範囲を明確にし、複数施設で比較できるデータ形式を整えることが普及の条件になります。横浜で得られる知見は、都市型処理場の更新計画だけでなく、将来の標準仕様や官民連携契約の設計にも影響する可能性があります。

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