ニュースの概要

シンガポール発のデジタルインフラ企業DayOneが、マレーシア・ジョホール州にあるKempas Tech Parkの水処理施設を拡張すると発表した。第2段階の工事で、自社で処理できる水の量を日量2,000万リットルへ倍増させる計画で、稼働開始は2027年第3四半期を見込む。この施設は、近くの河川から取った水を現地で浄化し、データセンターの冷却に使う工業用水へ仕立てる。こうした仕組みはマレーシアのデータセンター業界で初めてとされる。公共の水道網に頼らず、設備の敷地内で水を確保する発想が、今回の発表の核心である。

引用元: マレーシアのデータセンター向け水処理施設、処理能力を日量2,000万リットルへ拡張(Data Center Project Tracker)

分析・見解

日量2,000万リットルは街の水道に近い規模

日量2,000万リットルという数字は、人口にして十数万人規模の都市が一日に使う水道水に迫る量である。これを一つの工業団地が自前でまかなう。データセンターは電力の消費ばかりが語られてきた。しかし冷却に使う水も膨大である。

たとえば大規模施設では、一日に数百万リットルを蒸発させる例も珍しくない。AI向けの高密度な計算機が増えるほど、発熱は増え、必要な水も増える。水は電力と並ぶ、立地を左右する資源になった。

水道に頼らず、河川から直接つくる設計の意味

これまでの多くの施設は、自治体の水道から冷却水を買ってきた。この方式は手間が少ない。その代わり、渇水や料金改定の影響を直接受ける。ジョホール州は2023年前後にも、水の供給不安が報じられた地域である。

今回の施設は、河川水を取り込み、現地で工業用水に変える。つまり、水の調達先を公共網から自社の設備へ移す動きである。電力を自家発電で補う考え方と同じ発想を、水に持ち込んだと言える。

現地開発の技術と、膜処理が主役になる理由

河川水は季節や雨量で濁りや有機物の量が大きく変わる。冷却用の水は、配管の詰まりやさびを避けるため、安定した品質が求められる。この変動をならす中心技術が、微細な穴で不純物をこす膜(=水をこすための薄いフィルター)である。

当サイトでも扱う膜技術は、これまで飲料水や下水再生が主な出番だった。データセンター向けが加われば、需要の柱がもう一つ増える。しかも発注は一度きりでなく、膜の交換や薬品、保守が長く続く。装置メーカーにとっては、売り切りより継続収益の色が濃い市場である。

独自の視点:水が足りない国より、水が高くなる国が危ない

水不足というと乾燥地を思い浮かべがちである。だがジョホールは雨の多い熱帯だ。問題は水の総量ではなく、取水できる場所と、処理して届ける設備の能力にある。

需要が急に増えると、水道インフラの増強が間に合わない。結果として、水は足りていても値上がりしたり、割り当てが絞られたりする。今回の自前化は、水が乏しい国だけの話ではないことを示した。成長の速い地域ほど、水の調達設計が事業の足かせにも武器にもなる。

ビジネスへの影響

データセンター事業者が立地選定で確認すべき項目

新しい拠点を検討する企業は、電力契約と同じ熱量で水の条件を確認したい。確認したいのは三点である。取水できる水源が近くにあるか。処理設備を自前で持てる土地と許認可があるか。渇水時に水の優先順位がどう決まるか、である。

これを後回しにすると、稼働後に冷却の制約が出る。水の追加手当てには時間がかかる。初期の設計段階で、数年先の増設分まで見込んでおく姿勢が欠かせない。

水処理・膜関連メーカーにとっての商機

装置や膜を扱う企業には、データセンターという新しい顧客層が見えてきた。自治体相手の入札と違い、民間事業者は工期が短く、稼働率の要求も厳しい。納入後の遠隔監視や定期交換までを一括で提案できる企業が有利になる。

現地の水質に合わせた設計力も武器になる。今回のように現地開発の技術を組み込む動きは、汎用品の価格競争から抜け出す手段にもなる。

投資家と一般企業が持ち帰れる視点

投資の観点では、データセンター関連を電力と半導体だけで見ると見落としが出る。水処理、配管、監視システムといった周辺領域に、堅実な需要が生まれつつある。

一般の企業でも、工場や物流拠点の水使用を見直す契機になる。使う水を自社で処理し、再利用する割合を高めれば、料金と調達の両方のリスクを下げられる。まずは自社の水使用量を月別に把握するところから始めたい。

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