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水処理大手のVeoliaが、アラブ首長国連邦シャルジャ首長国にあるAl Hamriyah海水淡水化施設の設計契約を獲得した。同社が担うのは、逆浸透膜(=海水から塩分を分ける特殊なフィルター)の前後にあたる工程である。前段では、溶存空気浮上法で藻類や浮遊物を浮かせて取り除き、続いて二層式の加圧ろ過で細かな粒子を落とす。後段では、淡水化で抜けきったミネラルを石灰石フィルターで補い、飲める水に整える。施設の造水能力は1日41万立方メートルで、約140万人分の飲料水をまかなう計画だ。膜そのものではなく、その前後の工程を請け負った点が特徴といえる。

引用元: Veolia、UAEの大規模海水淡水化施設で前処理・再ミネラル化技術を受注(Smart Water Magazine)

分析・見解

受注の核心は膜ではなく、膜の前後にある

淡水化と聞くと、逆浸透膜ばかりが話題になる。しかし今回Veoliaが受けたのは、膜の手前と膜の後ろの設計である。ここに、大型プラントの本当の難所がある。

膜は繊細な部品だ。海水に藻や泥が多いと、表面に汚れが付いて水を通しにくくなる。洗浄の頻度が増え、交換も早まる。つまり前処理の出来が、運転コスト全体を左右する。

赤潮と藻類が多い湾岸で、浮上法が選ばれる理由

ペルシャ湾は浅く、水温が高く、藻類が急に増えやすい海域である。藻類は比重が軽く、一般的な沈殿法では沈みにくい。そこで溶存空気浮上法(=微細な泡を付着させて浮かせ、表面から掻き取る方法)が向いている。

続く二層式加圧ろ過は、粗い層と細かい層を重ねて粒子を段階的に捕まえる。大きな濁りは上で止まり、細かな濁りは下で止まる。ろ材全体を使えるため、目詰まりしにくい。

この二段構えは、日量41万立方メートルという規模ほど効果が大きい。処理量が大きいほど、わずかな水質の乱れが膜の運転停止につながるからだ。

見落とされがちな再ミネラル化の意味

逆浸透膜を通した水は、ほぼ純水に近い。そのまま配水すると、金属配管を腐食させやすく、味も平坦になる。そこで石灰石フィルターに通し、カルシウムなどを溶かし込む。

日本では水道水の硬度が低く、この問題は意識されにくい。一方、淡水化水に頼る地域では、配管の寿命と味の評価がそのまま住民の信頼になる。技術としては地味だが、利用者が最後に触れる品質を決める工程である。

大型案件で進む工程ごとの分業という流れ

近年の海水淡水化は、一社が全部を抱えるより、得意工程ごとに分けて設計する傾向が強い。サウジアラビアやUAEの大型案件でも、膜、エネルギー回収、前処理、仕上げを別々の専門会社が担う例が増えた。

背景には、電力コストの低減競争がある。膜の性能は各社で近づき、差がつくのは運転の安定性と保守の手間になった。前処理や仕上げに強い企業が設計段階から入る意味は、今後さらに大きくなるだろう。

今回の受注は、水処理の価値が機器単体から、工程全体の組み立て力へ移っていることを示している。

ビジネスへの影響

膜メーカー以外にも商機が広がる

淡水化市場への参入口は、膜の製造だけではない。前処理の薬品、ろ材、浮上装置、ポンプ、水質センサーなど、周辺領域には中堅企業が入り込む余地がある。大型案件は元請けが巨大でも、実際の部材は細かく分かれて調達される。自社の強みが前処理か仕上げのどこに合うかを先に絞ると、提案が通りやすい。

運転コストで比べる発想が必要になる

設備の購入価格だけで比べると、判断を誤りやすい。前処理が弱ければ、膜の洗浄や交換で年間費用が膨らむ。発注側も受注側も、造水1立方メートルあたりの総費用で見るのが実務的だ。

製造業や食品工場で純水や再利用水を使う企業にも同じ話が当てはまる。小規模でも、膜の手前の対策に予算を割いたほうが、結果として安く済むことが多い。

中東案件を狙う企業が押さえる点

湾岸の入札では、現地の水質データに基づく設計実績が重視される。藻類の発生期や水温の変化に対応した運転計画を示せるかどうかが、評価の分かれ目になる。

日本企業は膜や計測機器に強みを持つが、設計から保守まで一括で語れる体制が弱いと見られがちだ。パートナーと組んで工程単位で参加し、実績を積む道が現実的である。

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